長い行列。。
六本木の新国立博物館で開かれているミュシャ展へ行ってきました。
今回、ミュシャの門外不出の大作が来ると聞き、大変楽しみにしていましたが、開催期間のギリギリのタイミングで訪れることができました。
最後の一週間前とあってか、会場は大混雑、50分待ちで、大きな美術館の館外にまで行列は続いていました。
友人と行った為、待っている間も会話に花が咲き、長い待ち時間も、さほど苦にならなかったのですが、暑い日であった為、少々疲れました。
さすがにまだ日陰は心地よい風が吹くものの、ガラス張りの温室のようなロビーは人の熱気もあり、さすがに喉が渇くほどでした。
ミュシャのポスター
ミュシャといえば、キラキラとしたポスターが有名です。
ロートレックと同じ時代、ロートレックの簡素だけどリアルな、醜いところは醜いまま、あえて強調するかのような表現とは異なり、ミュシャの絵は美しくキラキラと魅せるスタイルで、大変な人気を呼びました。
彼がポスター画家として世に出た話は、まるで小説のようです。
チェコからパリへ出てきて、絵を勉強する青年は、画家として大成することを夢見ながらポスターの製作所に勤めていました。
クリスマスの日、たまたま大女優サラ・ベルナールがポスター制作の依頼に来ましたが、あいにく製作所はミュシャの他、皆不在でした。
結局サラの依頼に対して、ミュシャ自身の手で作り上げることになりました。
そして出来たのがミュシャといえば思い浮かぶあの美しい、極めて装飾的なポスターです。
これが世に出ると、大評判となり、サラベルナールも絶大な宣伝効果を得る事ができました。
一躍、ミュシャの名が世に出た瞬間です。
以降のミュシャは数々のポスターを手掛け、後世に数多くの作品を残しました。
ミュシャといえば、このキラキラとしたポスターが頭に浮かびます。
圧倒的なスラブ叙事詩
ミュシャの祖国であるチェコは、近年に至るまで苦難の歴史を歩んできました。
画家を目指した彼自身の集大成の作品として、晩年、大作「スラブ叙事詩」が描かれました。
ミュシャは、ポスターばかりがイメージされますが、今回来日したこの作品は、祖国の歴史を描いた巨大な作品です。
ポスターのイメージからはほど遠い、重厚な作品、しかも連作です。
圧倒されるような大画面に、スラブの歴史が入魂の筆で描かれており、その作品の前では圧倒されます。
時はすでに近代絵画の時代。
この時代に敢えて自らの国の歴史を何枚もの巨大な絵に残そうとしたミュシャの決意と祖国に対する深い愛と血を感じます。
美術館の部屋に入ると、まず一作目に、異国の兵が蹂躙しようとする中、兄弟でしょうか草むらの中で恐怖の目でこちらを向いて見開く目にとらえられます。
その視線の恐怖心が鑑賞者の体を突き抜けます。
最初にとりあげられたこの作品に、まさにミュシャが描こうとした思いを見るようです。
圧倒されるのは、作品の大きさです。
実に6メートルもの巨大画面に古代からのスラブの歴史が、苦難の歴史が何作品も描かれているのです。
パリで大成功を収めたミュシャ。
美しいポスターを描きながら、自分は何を人生に残すのか、何のために生きてきたのか、行き着いたところは”祖国”への強い思いだったのですね。
ミュシャは、残りの人生をひたすら自分の民族に捧げるという誓いをたて、20年近くもかけて、入魂の大作群が製作されたのです。
チェコはよく知られているとおり、その後も苦難の歴史が長く続きました。
その中で、彼の絵は、ナチスの迫害から逃れ、共産主義政権下では退廃的なブルジョア芸術とみなされたり、なかなか日の目を見ることのなかった作品です。
しかし間違いなくミュシャの気迫が込められた圧倒される名作です。
今や、門外不出の名作とされ、日本での特別展、この絵を実際に目にすることが出来、良かったです。
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