あの頃とは違う読書体験——静かな夜に開いた一冊
夜、ひとりでワインを飲んでいたときのことだった。 NetflixもYouTubeも、どれもいまひとつ心に入ってこなくて、 スマホを置いて、ただ静かな部屋のなかでぼんやりとしていた。
ふと目に留まったのは、本棚のすみにあった一冊の本。 あの頃、何かの推薦図書で読んだきりだった『星の王子さま』。 小さな星に住む、金髪の王子の物語—— そのタイトルが、なぜかその夜は心に引っかかった。
開いてみると、驚くほどすらすらと読めてしまう。 子ども向けの本かと思っていたけれど、 その行間には、大人の心にしか届かないような寂しさと、やさしさがあった。
冒頭の“ボアの絵”が語るもの
そして、冒頭に描かれた“ボアの絵”を思い出す。 帽子のように見える絵が、実はゾウを飲み込んだウワバミだったこと。 「本当に大切なことは、目には見えないんだよ」というメッセージは、 すでにあの最初のページから始まっていたのだと思う。
私たちは日々、目に見えるものにばかりとらわれてしまう。 数値、成果、肩書き、スケジュール—— それらが積み重なるほどに、 心の中の静かな風景を、見失ってしまいそうになる。
でも本を開けば、忘れていたものに気づく。 見えないものの中にこそ、 ほんとうの意味や美しさが隠れていることに。
王子さまと出会う、もうひとつの視点
砂漠に不時着した飛行士と、どこからともなく現れた王子さま。 あの頃はただのファンタジーだと思っていたのに、 いま読むと、まるで作者自身の遺言のように思えてくる。
王子さまが語るひとつひとつの星の住人たちは、 どこか私たちの世界の縮図のようで、 誰もが何かに夢中で、でもどこか孤独を抱えていて。
そして彼自身もまた、ひとりぼっちだった。
その孤独を埋めたのが、バラであり、キツネだったのだと思う。 とくに、あのキツネとの対話。 あそこには、この物語が語ろうとしているすべてが詰まっていた。
「おいらのひみつだけど、すっごくかんたんなことなんだ。心でなくちゃ、よく見えない。もののなかみは、目では見えない、ってこと。」
この一言が、王子さまの旅のすべてを照らし出しているように感じた。 そしてそれは、日々目に見えるものに追われる私たちが、 本当に大切なものを見失いそうになる今にこそ、深く響く言葉なのだと思う。
「君がそのバラのために費やした時間が、 そのバラを特別なものにするんだよ」
この言葉が、心の奥深くに沁みてきた。
自分だけの“特別”に気づくために
私たちはいつも「何が大切か」を誰かに説明しようとして、 わかってもらえないと、少し落ち込んだりもする。 でも本当は、大切なものなんて、誰かに証明するものじゃない。
その人のなかで、静かに、深く、 時間をかけて育っていくものなのだ。
たとえば、何年も続けてきた仕事。 うまくいかなかった恋愛。 いつかの別れや、後悔の記憶。
それらすべてが、あなたの人生に、 かけがえのない“意味”を与えてくれている。
それを思い出させてくれるのが、この物語なのかもしれない。
“大人の再読”としての『星の王子さま』
この本をもし昔に読んだことがあるなら、 いま、ふたたび読んでみてほしい。
あのときには見えなかった言葉が、 今のあなたの心には、ちゃんと届くと思うから。
そして読み終えたあとには、 そっと、なにか小さな“かけら”をそばに置いてみて。
たとえば—— 金色の小さなキツネの置物。 一輪のバラのドライフラワー。 あるいは、静かに灯る、星の形のキャンドル。
目に見えないものを、そっと心に残してくれるような、 そんなものを。
『星の王子さま』は、そんな風に、 静かな余韻を、あなたの手のひらに残してくれる一冊です。
心に風が吹く読書体験を、もう一度
サン＝テグジュペリ『星の王子さま』
遠い星からやってきた王子と、地球に不時着した飛行士との出会い。 そこから語られる、孤独・友情・愛・喪失—— そして、「ほんとうに大切なものは、目に見えないんだ」というキツネの言葉。
読むたびに気づきが変わる、不思議な物語。 それは、子どもよりも大人のほうに必要な“物語”かもしれません。
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小さな余韻を手元にとどめるなら
物語を読み終えたあと、そっと手元に置いておきたい“何か”。 たとえば、こんな物はいかがでしょうか。
星の王子さまのクリスタルオルゴールライト
透明なクリスタルの中に、小さな王子さまが静かに佇む。 その姿は、まるで物語の一頁がそっと閉じられたあとも、 私たちの心の中で静かに生き続けているよう。
やわらかな光が、夜の読書時間にそっと寄り添い、 オルゴールからは「星に願いを」が静かに流れ出す。
あの日、王子さまが見上げていた星を、 あなたの部屋の中に思い出として灯してくれるような、そんなひと品です。
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