忙しさに追われる日々のなかで
夜、自室で静かに本を開いたとき—— ページの向こうに、自分自身を見つけることがある。 『モモ』は、そんなふうにして再び出会う本だ。
かつて読んだ記憶があるけれど、内容は曖昧。 けれど今になって手に取ってみると、 そこに書かれていたのは「時間に追われる大人たち」——まさに、私たちだった。
グレーの男たちと、失われていく心
『モモ』に登場するのは、「時間どろぼう」と呼ばれる灰色の男たち。 人々に「時間を節約しろ」とささやき、 仕事、効率、利益のために大切な時間を奪っていく。
その結果、人々は笑わなくなり、 子どもたちさえも遊びをやめてしまう。
読みながら、ふと自分に重ねてしまう。 やることに追われ、誰かのために動き続ける日々。 でも、その忙しさは本当に、自分のものだっただろうか。
モモの静けさが教えてくれること
そんな世界に現れたのが、小さな少女・モモ。 彼女は何も持っていないけれど、 「人の話を静かに聞く力」があった。
人々はモモに話すうちに、自分を取り戻していく。 答えを出さなくてもいい。 ただ「静かに聞いてくれる誰か」がいるだけで、人は救われるのだ。
その描写に、胸が締めつけられるような思いがした。
ほんとうの時間とはなにか
時間とは「何かをすること」ではない。 誰かと過ごすこと、風に揺れる葉を眺めること、 ひとりで静かに考えること—— そうした「無駄に見える時間」こそ、心を養っていたのだ。
そして、その時間は、他人が管理できるものではなく、 自分自身で感じ、味わい、慈しむべきものなのだということを、 この物語はそっと教えてくれる。
いま、もう一度この本を手に取る理由
子どものころには気づかなかったことが、 いまだからこそ心に刺さる—— 『モモ』は、そんな“読むたびに成長する本”だ。
「何かを頑張るため」ではなく、 「何かを取り戻すため」に読みたい一冊。
忙しさのなかで見失ったものを、 もう一度、心のなかに迎え入れてみてほしい。
『モモ』を読むなら
ミヒャエル・エンデ『モモ』
時間を節約し続ける現代人に、 「ほんとうの豊かさとは何か」を問いかけてくる物語。
物語の余韻をそばに置いて
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