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リベルタンゴに挑戦
かつて、テレビのCMで世界的チェリストヨーヨーマによる演奏から日本でも爆発的に広まり、今でも愛されるこの演奏、素敵ですよね。
演奏会も終わって時間もできたので、ちょっとソロ曲にでも挑戦してみようかな、と思い、前から気になっていたこの曲の譜面を入手し、以前放映されたNHKのラララクラシック等から曲に関する情報を調べてみました。
そもそも私はピアソラという作曲家自体ほとんど知りませんでしたが、ちょっと思いもよらなかった深さを知り、今、譜面を前に、身が引き締まるような気持ちがします。
タンゴに欠かせぬバンドネオン
作曲家のアストラル・ピアソラはアルゼンチンの作曲家でバンドネオンの奏者です。
バンドネオンとはタンゴには欠かせぬ楽器で、アコーディオン属に含まれますが、肩にかけて演奏するアコーディオンと比べれば、ちょっと小ぶりで、膝の上にのせて演奏します。
又、楽器の構造も、鍵盤を弾くアコーディオンとは異なり、ボタン式になっています。
ダンスのステップを支える重要な楽器です。
この楽器から生み出される小気味いいリズムは、「電撃のリズム」とも言われるそうで、タンゴにぴったりあうのです。
バンドネオンによるリベルタンゴ冒頭のリズムや、中間部の鋭く情熱的な旋律が熱い南国の情熱的なスピリッツを伝えますね。
ピアソラとリベルタンゴ
ピアソラはアルゼンチンで生まれ、8歳の頃にタンゴ好きの父親からこの楽器を買い与えられ、レッスンを始めます。
みるみる腕を上げて、タンゴの本場であるブエノスアイレス一流のタンゴ楽団に入団、ナイトクラブやダンスホールで演奏して腕を上げ、数年後には、自分の楽団を持つまでになったのです。
しかし、タンゴはダンスの為の音楽、形式が定められ制限が多いタンゴに対して、ピアソラは次第に行き詰まりを感じるようになります、
ついには楽団を解散、タンゴ界から姿を消して、自分の音楽を探すため、クラシック音楽を学ぼうとパリに留学します。
しかし、そこで、先生から、「決してタンゴを捨ててはいけない」と諭され、自分のタンゴを作ることを決意するのです。
ブエノスアイレスに帰国後、踊るための制限に縛られない、聴くためのタンゴを演奏する楽団を結成して活動を始めたのです。
しかし、それまでのタンゴとのあまりの違いに聴衆は猛反発。
同業者とのけんか、通行人からの罵声、はてはタクシーの乗車拒否まであったとか。
それでもなおピアソラは、自分のタンゴを追求し続けました。
そして1970年代、若者たちに人気のロックを自分のタンゴに取り入れようとしました。
そして作り上げたのが「リベルタンゴ」なのです。
ピアソラ自身はこの曲を、「自由への賛歌のようなものだ…」と語ってるそうです。
りベルタンゴという曲名、「自由」 libertad と「タンゴ」tango が組み合わされた造語、つまりまさに「自由なタンゴ」を意味するのです。
自由なとは、躍りが主役の音楽から、エレクトリックギターやエレクトリックベースなどを加え、ロックや、アドリブの要素まで加えて、踊ることから自由になったことを意味します。
音楽自体が主役の、踊るためではなく聴くためのタンゴを意味するのです。
驚くべきあくなき追求精神で、名声を捨てて困難の中に飛び込み、自分の表現を追求して作り上げた結晶がこのリベルタンゴなのです。
リベルタンゴの構造
この曲、の「自由」、について楽曲構造から具体的に説明すると。。
まずリズムですが、従来のタンゴによく出てくるリズムは、4ビート4つ打ちで、“1・2・3・4″とカウントします。
しかし、「リベルタンゴ」は、ピアソラのトレードマークとも言われる“3・3・2″のカウントするリズムをベースにしています。
つまり4拍子の8分音符8個を、3+3+2で刻むのです。これにより、激しさ、切迫感を表現するわけです。
次に形式ですが、タンゴの曲に、ロックやジャズの形式、“リフとメロディー”が盛り込まれていて、従来のタンゴの縛りから自由になっているのです。
リフというのは、リズミカルに繰り返される音のパターンのことです。
リベルタンゴはベースにリフという短いメロディーを何度も繰りかえす技法が用いられています。
この曲のリフは、音程が激しく上下し、悲劇的な、何かに追い立てられるような焦燥感や逃れられない運命のようなものを表しているとの概説がありました。
一方それとは対照的、対比的にに主旋律のメロディーがゆったりとうたいあげられます。
ヨーヨーマのチェロによるあのカッコいい旋律は、この構造によってくっきりと浮き上がり情熱的に歌い上げられているのです。
この対比が曲の魅力を形作っています。
さて、ということでこの曲に、ピアソラの思いを受けべながら、情熱のタンゴを弾いてみることにします。
非常にワクワクします。
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