ロバートキャパという世界的写真家は実は愛するゲルダと作った架空の人格

歴史的一枚

戦場で崩れ落ちる兵士の、あまりにも有名な一枚の写真。

ロバートキャパの名を歴史に残す事になったセンセーショナルな写真です。

スペイン内戦の最前線で、銃弾を受けたその瞬間をとらえたもの。

戦争の真実を、写真という事実の迫真性をもって、突き付けられます。

私は長い間、ロバートキャパというあまりに有名な写真家の名が実は作られたものであることを知りませんでした。

裏の顔があることを知りませんでした。

そこにはキャパと愛しあった一人の女性がいたのです。

そこにはどんなドラマがあったのでしょうか。

ロバートキャパという写真家を演出し、そして彼を心から愛した一人の女性がいました。

ゲルダ・タロー。

キャパにとって大変大きな存在でした。

二人でロバートキャパという、後世あまりに有名な写真家を創作したのです。

二人を題材にした演劇が、宝塚の舞台などにも取り上げられ、広く知られるようになりました。

ロバートキャパ、本名はハンガリー生まれのユダヤ人フリードマン・エンドレ・エルネー。

左翼運動で逮捕され、釈放後ベルリンに行きます。

カメラマンとなった彼は、警戒の中で、珍しいトロツキーが演説する姿を写真に撮り、世にフリードマンの名前を知らしめました。

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運命の出会い

しかしその後パリに渡るも、なかなか写真家としての芽が出ませんでした。

そんな中で運命の人、ゲルダ・タローと出会うのです。

ゲルダもハンガリー出身、反ユダヤ主義から逃れパリに移り住んだのです。

そして同じユダヤ系のフリードマンと出会い彼の助手となって写真技術を学んだのでした。

運命の二人は恋に落ちたのです。

ゲルダ・タロー、本名はゲルダ・ポホリレ。タローの名はフリードマンと親交のあった岡本太郎にちなんでつけた名前なのです。

そして、ゲルダとフリードマンは、架空の人物、アメリカからやってきた有名な写真家ロバート・キャパを生み出し、世にバードキャパに売り込んだのです。

そして、その売り込みは成功します。

そう、ロバートキャパは二人が創り上げた架空の人物像なのです。

若い頃のフリードマンの性格は、どちらかというと、当時まだ青い若者で、ハリウッドで映画監督になることを夢見たりもしていました。

そんなフリードマンを、ゲルダがグイグイと戦場カメラマンとして売り込み、戦争の最前線へ出て写真を撮り続けたのです。

一枚の写真があります。ゲルダが前を歩きその後ろをフリードマンがついていくような後姿。
まるで二人の関係性を象徴しているような写真です。

そして、ロバートキャパの名前で撮られている写真は、実はフリードマンとゲルダの二人が撮ったものなのです。

その事は実際に使っていたカメラで証明されているのです。

フリードマンはライカをゲルダはローライフレックスを使っていました。

同時に一人の女性を別々のカメラで撮ったロバートキャパの写真があるのです。

これか、フリードマンとゲルダの二人が撮ったことを証明しているのです。

ライカが写した写真は横長。

ローライフレックスは正方形。

キャパの作品とされるなかにこの正方形の写真も多く含まれており、ロバートキャパの名の裏に、実は数多くのゲルダによる戦場写真が含まれているのです。

ゲルダの死

フリードマンはゲルダを心の底から愛していました。

二人はロバートキャパという架空の人格の中でともに戦いながら、深く愛し合っていました。

そして戦場の最前線の実態を写真で伝える事を天命として身を捧げるのです。

そして、ゲルダは激しさを増すスペイン内戦の中を果敢に取材中、政府軍の戦車にひかれて亡くなってしまうのです。

キャパは彼女の死の知らせを聞き、3日3晩泣き続けました。

それから、キャパは二人で作り上げたキャパという架空の人格に、より近づこうとしてゆきました。

実弾の飛び交う戦場を、より前に、より前に。

戦場の最前面に立とうとしました。

一枚のあまりに迫真の写真があります。

場所はノルマンディ上陸作戦の真っ只中、激しい銃弾の飛び交う中、海に浸かって行軍する姿。

「Dディ」

半数近く死んだとされる、このあまりに激しい戦いは、スピルバーグの映画、「プライベートライアン」の中で、まるでドキュメンタリーのような迫真の映像で迫り、いかに凄まじい戦闘であったのか伝えています。

「Dディ」は、あの銃弾の嵐の中、ふりかえりざまに撮ったもので、画像が激しくぶれています。

そしてそのブレが、最前線の迫真性をよりリアルに伝えているのです。

そこは死と隣り合わせの世界。

その後も、キャパは戦争の最前線で写真を撮り続けました。

戦争の真実を伝えるために。

思えば戦争がなくなれば彼の仕事はなくなります。

しかし、それこそ実は彼が心から望んだ事なのでしょう。

キャパは真実を伝え続けました。

戦場の最前線に立ち続け、最後は第一次インドシナ戦争の中、地雷に触れ亡くなったのです。

まだ40歳の若さでした。

ゲルダと作り上げたキャパという人格の中で殉じたのです。

フリードマンはキャパという架空の人物を作り上げ、そしてゲルダ亡きあと特に、より最前線へと出るようになり、愛するゲルダとともに作り上げた人格にいつしかフリードマンという人格とキャパという人格が一体化したのでしょう。

ユダヤ人として生まれ、戦争と戦うキャパという人生に殉じた二人でした。
何という鮮烈な人生でしょうか。

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