世界を疑似体験
NHKで毎週火曜日に放映している「世界ふれあい街歩き」は、訪れたい街が紹介される回は欠かさず見ています。
名所名跡を歩くわけではなく、街中をふらりと歩きながら、気の向くまま小さな路地などへ入り、まるで自分が疑似体験しているような感覚になります。
カメラは「ステディカム」という、揺れを吸収する機材を使用していて、ハンディカメラの映像ように、歩く振動で画像が上下に揺れることもありません。
まるで自分の瞳で見つめているように、画面中に入ってゆけるのです。
このカメラは重量が20キロもある大変重たいものらしく、たまに光の角度でカメラさんの影が地面に映ったり、ガラス窓に映ったりすることがあります。
その度に、大変な姿で移動されていることがわかります。長い坂道や階段など、さぞや疲れることでしょう。
ナレーションは毎回異なる俳優さんが担当されます。
旅人の心になって、街の様々な光景をみながらつぶやいてくれ、臨場感を増してくれます。
思いのまま、気の向くまま、この路地に入ってみようと、足を踏み込んでみたり、ベンチで楽しそうにおしゃべりにふけるおばあちゃんたちに声をかけてみたり、時には家の中を覗かせてもらったり。
どこの国だったか忘れましたが、町の古本屋さんの倉庫に入れてもらいました。
表からはまるで想像もできない大空間が地下に広がり、異空間のような大倉庫の中に、ぎっしりと積み上げられた古本の数々。
時に、大変面白い体験をさせてくれます。
録画して、いつも見るのは眠る前。
まるで、どこでもドアを開いて、旅先から帰ってきたような、夢見心地な気分のまま、眠りにつきます。
ちよっと贅沢な気分を味わうことが出来るのです。
街によって異なる表情
この番組で知ったのは、街によって表情が全く異なることです。
街によって空気感が、まろやかだったり、快活だったり、底抜けに明るかったり、あるいはどこか寂しげだったり。
フランス、イギリス、南欧、北欧、東欧、アメリカ、カナダ。。。
それぞれの国の歴史を感じさせてくれます。
それぞれの街で感じる空気感は、何世代もの人々が、街の歴史が作り上げたものでしょう。
空気感は様々な所から伝わってきます。
街の緑の多さから、窓辺に置かれた花々から。
声をかけた人の優しい表情や、話のつきぬおばあちゃん、家々の壁の色から。
街の見えない所に、これまで醸造されてきた文化が空気となって堆積し、様々な所から沸き上がってきます。
南欧の漁師町など、必ず一様に太ったおばちゃんたちがたむろし、井戸端会議を楽しんでいます。
まるでボテロの絵に出てくる太った人物のように、はちきれんばかりのおばちゃんが、私は昔はきれいだったのよガハハハと笑っています。
実際に昔の写真を見せてくれると、確かにそこには目を疑うばかりの、絶世の美女が写っていたりします。
自分の街を愛する人々
どこの街でも、声をかけた人たちは、自分たちの住む土地を心の底から愛し誇りに思っています。
ここが世界一の場所なんだと皆誇らしげに自慢しています。
もっとも不満のあるコメントは、たちどころにカットとなるのでしょうが、自慢げに語る彼らからは、街を心から愛する真情が伝わって来るのです。
カナダのケベックが大変印象深い街でした。
どの人たちも皆、街の人々全員が、等しく心の底から街を愛しているんではないかと思わせる空気が伝わって来るのです。。
街は美しく、皆それぞれに充実した生活を生きているように見える。
番組の最後に、車のナンバープレートが紹介されました。
「私は忘れない」という文字がフランス語で刻まれているのです。
聞いたところでは、ケベックはイギリス統治の時代になっても、フランスの豊かだった植民地時代を忘れないために書かれている、という説が有力なのだそうです。
「私は忘れない」きっとそれぞれの人にそれぞれの思いがあるでしょう。彼らにとって忘れない物とは何なのでしょう。
一人ひとり、それぞれの思いを、そっとその言葉の上に重ねていることでしょう。
素敵な街です。
スポンサーリンク