発見されたボトルメール
ボトルメール。
瓶の中に手紙を封じ、海や川の流れに届ける事を委ねるのです。
先日、ニュースで、130年以上前にボトルへ入れて船から流した手紙が、西オーストラリア州近くの砂丘を歩いていた方により発見されたと聞きました。
海に投じてから発見されるまでの期間としては、ギネスブックものだそうです。
今は亡き当時の船乗りが投じたのでしょうか。
ボトルの中のメッセージは、誰かに拾われ読まれることを目的に流されたもの。
人間の一生を越える132年という時を経て、オーストラリアの住民の手に渡り、メッセージの役割を果たした事実に心を揺さぶられます。
発見した方は、たまたま散策していたトーニャ・イルマンさんという男性。
ゴミを拾っていたら、瓶の中に濡れた紙が入っていたのを見つけたのです。
家に持ち帰ってオーブンで乾燥させたところ、浮かび上がった文字から、遠い昔に流されたものであることがわかったというのです。
海に投じられた経緯
実は、このボトルを投じた目的は、決してロマンチックでもドラマ的でもなく、極めて現実的なものです。
メッセージは、1886年6月12日付で、ドイツ海軍天文台が、海上輸送のルートで実験の一環として海に投げ込んだものだそうです。
船の名前もポーラとはっきりしており、メッセージには、「手紙を見つけたらドイツ領事館に連絡するように」と書かれていました。
ボトルが投じられた経緯は、当時ドイツが69年間にもわたって手紙を入れた瓶を船から海に投げ入れる実験を行っていたそうで、数千本が流されたということです。
そのうちの1本だったのですね。
目的は海流調査。
トーニャさんの奥さんは、これを西オーストラリア博物館に持ち込み、正真正銘132年前の手紙であることが判明したそうです。
投じられたうちの一本が今回拾われ、メッセージがついにその目的を果たしたというわけです。
しかし目的はどうあれ、海に投じられて、遥か132年という時をかけ、その瓶はどんな旅をしてきたのか。
瓶はいつしかオーストラリアの砂浜に流れ着き、誰かに見つけられる為、手紙は瓶の中に長い間、閉じ込められて、じっと待っていたのです。
手紙が波の流れにに託され、人の一生分の時を越えて、ようやく閉じた蓋が開けられ、静止した時が132年たって動き出したのです。
まるでタイムトリップしたようです。
メッセージを容器に詰めて潮の流れに託すことは古くから行われてきたそうです。
ボトルメールの歴史
紀元前のギリシャの時代から行われていました。
日本では平家物語の中に卒塔婆の中へ、親へ望郷の思いと共に句にしたためた思いを海に流した記述があります。
しかし過去に海へ投げ込まれたであろう多くのメッセージは、どこに届く事もなく空しく海の底へ沈んだことでしょう。
或いは、幸いにも海岸にたどり着いたものの誰にも見つけられぬまま打ち捨てられているメッセージが数多く残っている事でしょう。
開けられるのを長い年月待っている手紙が、132年よりもっと遥かに古いメッセージが、まだ私たちをどこかで待っているかもしれません。
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