女性主人公
私は小学生からの、筋金入りの大河ドラマファンです。
今年の「おんな城主直虎」、実は全く期待せずに見始めましたが、予想外に面白いです。
正直なところ、制作発表を聞い時にはガックリしました。
昨年は、名作「真田丸」に大興奮の一年でしたが、2年連続して同じ戦国時代。
しかも、小領主の井伊家という、極めてローカルなお話。
井伊直虎という名前も、今回初めて知っ
た、あまりにもマイナーな人物。
そもそも、どうして無理に女性を主人公にしようとするのか、NHK の方針にも納得がゆきませんでした。
女性の主人公はいっこうに構わないのですが、歴史を動かした訳ではない人物を主軸に置いてしまうと、時代の流れが見えないのです。
例えば北条政子のような歴史を動かした人物なら、時代の流れを描くことができます。
しかし、最近で言えば、吉田松陰の妹のように、歴史の傍流から描いてしまえば、時代の流れがわかりにくい。
「八重の桜」なども前半の会津落城までは面白かったものの、後半の明治以降、京都に舞台が変わり、教育者としての物語へ変わるとともに失速してしまいました。
勿論、時代の空気のようなものは伝わりますが、国が向かっている歴史のうねりには、どうしても靄がかかってしまいます。
「篤姫」のような成功例はあるものの、ほとんどが失敗でした。
今回も、女性を主人公にたてる為に無理矢理掘り起こしたように感じた人物。
主役を男女交互にしなければならない内部の取り決めでもあるのでしょうか。
制作発表時に感じた私のガックリ感とは、そういうことでした。
追いうちをかけるように、ドラマが始まるタイミングで、主人公の直虎は、実は女ではなく男だったという説を裏づける資料が次々と出てくるというおまけつき。
とはいうものの、長年の大河ドラマファンですから、見るだけは見よう、というのが正直なスタンスでした。
「おんな城主直虎」が面白い
ところが、始まってみれば、思わずストーリーの面白さに引き込まれていました。
今年のドラマに限っては、歴史から離れて、”昔々どこかの国の知らない世界の物語”と割り切って見れば良いような気がします。
3人の幼馴染みのトライアングルが、物語として非常に面白いのです。
3人の子役達の健闘は大きかったですね。
大人になってからは、主演の柴咲コウさんの存在感はさすがです。画面の中で光っています。
そして爽やかな三浦春馬さんの存在感。
注目すべきは高椅一生さんの演ずる人物像が実に面白いのです。
主人公直虎を愛する、自らの心は封印。
小野家という、今川方の井伊家監視役という運命に飲み込まれ、悪役としての道を進まざるを得ない葛藤。
しかし井伊の敵を演じる事によって、かえって憎まれ役を隠れ蓑に、人知れず直虎を守ろうとする、屈折した人物を演じる高橋一生さんの演技が素晴らしいのです。
高椅一生さんのファンは、ますます惚れ込んでしまうのではないでしょうか。
脚本と音楽
このドラマを紡ぎ出す脚本家は、森下佳子さん、「-仁-」や、「天皇の料理番」をはじめ、数々の名作を生み出している実力ある脚本家です。
45分の時間枠の中で、毎回ドラマがきちんと構築されています。
人物が魅力的に見えるのも、森下さんの脚本力のなせる技、登場人物のキャラクターガ浮かび上がり、さすがと感じさせられます。
テーマ音楽が好きです。
作曲者は「花は咲く」などを書いている菅野よう子さん。
世界的なピアニスト、ランランの弾く、みずみずしいコロコロとしたピアノの音色が、ぐんぐん成長していくタイトルバックの絵とマッチして、グイグイ引き付けられます。
視聴率は低いようですが、今後、登場人物たちが、テーマ音楽のタイトルバックの芽のように伸びていき、物語が大きく展開してゆくのが楽しみです。
ドラマの視聴率と作品の良し悪しは、どうも比例しないようですね。
視聴率は、ドラマの質をはかる指標にはなり得ないようです。
NHK の製作者の皆様には、視聴率に惑わされず、一年間質の高い、大河ドラマの歴史に残るような作品を創ってゆかれることを期待しています。
ただ、今後ドラマにとりあげる時代の選定は、確実に人気のとれる時代ばかりを選択するのではなく、日本史全体の幅広い選択肢の中から選んでほしいと願います。
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