大河ドラマに望む事
来年2018年の大河ドラマは中園ミホさん脚本による「西郷どん」、再来年の2019年は宮藤官九郎さん脚本による「いだてん~東京オリムピック噺~」。
いずれも実力ある脚本家による作品で、非常に楽しみでです。
しかし最近の大河ドラマには少々不満があります。
・一年おきに女性を主人公に据える
・取り上げる時代は戦国時代と幕末ばかり
まあ時代については、再来年、新しい試みとして近現代をとりあげます。
しかし、オリンピックムードを盛り上げるため、無理やり取り上げた印象は否めません。
宮藤官九郎さんの脚本という点は、非常に魅力的ではあるのですが。
しかし何故、歴史ドラマでオリンピックなんでしょうか。
なにも大河に取り上げなくても、という気持ちをぬぐう事が出来ません。
これまで歴史ドラマを楽しみにしてきた大河ドラマファンとしては、少々複雑な気分です。
戦国、幕末から離れ、取り上げてほしいと思うテーマを勝手に5つほど上げてみました。
①大化の改新~壬申の乱
この時代は、史実も不明な部分が多く、又、時代考証も難しいだろうと思いますが、ドラマとして非常に面白いと思います。
原作は、井上靖さんの「額田王」という素晴らしい小説もあります。
中大兄、大海人、額田王という3つの視点から、複眼的に重層的に描かれ、面白いドラマになるのではないでしょうか。
又、サブストーリーとしても、例えば有馬皇子が王位争いから逃れるため、狂気を偽りながらも、ついには争いに巻き込まれて殺される悲劇の物語など、それだけでシェークスピアのような一編の舞台演劇にもなりそうです。
その他にも、あの時代には、沢山のドラマが詰まっています。
又、万葉集には、あの時代の人々の息吹きが残されています。
一年間に渡る、長いドラマに飽きさせる事のない、豊富な材料があります。
②女帝の時代(持統~称徳天皇)
天武天皇から持統天皇の時代に、良くも悪くも、日本の原型がつくられました。
藤原氏が権力を握り、大王(おおきみ)から天皇という位置づけが定着した時代、
そして実質的な力を得た藤原氏をめぐる政治的駆け引き。
道鏡事件という、実は革命とも思える事件と、本当は賢明な人物であったのではないかと想像させる称徳天皇が崩御するまでの時代。
どこから描いても物語が詰まっています。
聖と俗が入り混じる時代です。
この時代なら、女性を主役に据える事が出来ます。
③藤原道長、頼道の時代
平安貴族の私生活は、描かれたことがないのではないでしょうか。
「この世をば、我が世とぞ思う~」と権力を謳歌した道長から、結局子供に恵まれず、外祖父としての地位を失っていくことになる頼道の時代。
藤原氏の権力は、娘を天皇に嫁がせ、外祖父の立場を得た結果ですから、女性の存在は大きく、最近の大河ドラマのスタンスにもかなうのではないでしょうか。
やはり、藤原氏の権力闘争をバックとする、彰子と定子のお妃の争い、そしてそのお妃を支える紫式部、清少納言のスター的存在はドラマに欠かせません。
中学、高校の古典で、さんざん学ばされた平安時代の世界は、興味深い世界ではないでしょうか。
既に映像化されていますが、源氏物語のフィクション世界を、劇中劇として効果的に使えば、面白いものになるだろうと想像します。
④平安から鎌倉、仏師からみた世界
ちょっと視点を代えて、仏師の世界から描いたら、面白いものにならないでしょうか。
この時代には、仏教がエリート層による知的学問から、民衆へと救いの手が広まりつつある時代です。
この時代の仏師として真っ先に運慶と快慶が浮かびます。
彼らは、阿弥陀仏全盛の京都仏師のエリート世界に入ることが出来ず、度重なる戦で荒廃した奈良で、芸術性の高い仏像を修復するという需要に応えつつ、白鳳時代の優れた写実的な作品を自分の中に蓄積させ、独自の芸術を開花させて行きました。
彼らの成長物語を時代と重ねて描けば面白いだろうと思います。
思想的な歴史を描きますので、いかにわかりやすく描くかが難しいところです。
⑤足利義満の時代
畳の上で死ぬ事ができなかった人物が多い足利将軍家ですが、その中にあって絶大な権力を手にした化け物のような将軍が足利義満です。
一説によると天皇の地位すらも手にかけようとしていたとか。それがきっかけで毒殺されたという説もあるほどです。
あともう少し生きたなら、今の金閣寺は、さらに大きな煌びやかな政治の舞台となっていた筈でした。
義満の政治の中心として、物凄い歴史的遺物として今に残っていたことでしょう。
正直なところ、あまり好きな人物ではありませんが、歴史上に大きな存在感を残す怪物です。
彼がいかに権力を得ていったのか、そして何故一代で足利氏は絶大な権力は失ったのか、興味深い時代です。
面白いドラマが出来るのではないでしょうか。
ドラマを制作するには、多くの人が楽しめるものでなくてはならず、単に歴史好きの人間を満足させるものであってはなりません。
又、取り上げるテーマも、政治的にも思想的に採用しずらいものがあると思います。
ですから最も無難なそして、視聴率も稼ぐ事のできる人気の高い戦国と幕末が取り上げられる事になるのでしょう。
しかし、どの時代にも人を感動させるドラマは存在します。
いかに料理して行くか、脚本の力次第ではないでしょうか。
単なる歴史好きの戯言ですが、制約条件をクリアして、様々な時代をドラマとしてぜひ見てみたいものです。
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